take0329のブログ

好きこそものの上手なれ

投資家が「お金」より大切にしていること④

続いて第4回目。学びはススム。テーマは「世の中に『虚業』なんてひとつもない」。


みなさんは会社というものに対して、どのようなイメージを持っているでしょうか?


「会社は生活費を稼ぐところ」「会社はつらいところ」「自分の個性が消滅してしまうところ」「時間とストレスをお金に換えるところ」などネガティブなイメージを持っている人が意外と多いことに驚かされます。


この章では、みなさんがお金を稼ぐときに必要となる「会社」、そして「仕事」の本質について考えていきたいと思います。


2005年に実施された世界価値観調査によると、「余暇が減っても常に仕事を第一に考えるべきだ」という考えに賛成する日本人の割合は、たったの20.3%でした。


これは、調査した47ヶ国中最下位であり、15歳から29歳の若年層に限ってみると、その割合はさらに下がって10.5%です。日本人はめちゃくちゃ働くのに、心の中では、仕事のことはそんなに好きではないんですね。


ドイツでは62.4%、中国でも55.8%、あまりあくせく働かなさそうなイタリアでさえも47.0%の人が「仕事が第一」だと考えているのとは実に対照的です。


さらに言えば、日本人は仕事仲間のことも実はあまり好きではありません。「360度評価」に関して、私がかつて在籍していた大手外資系金融機関ではニューヨーク支社に比べて東京支社のほうが、同じ人物でも平均点が必ず低くなります。


日本人は「あいつはこういうところがダメだ」「この人はまだ◯◯ができていない」とお互いを刺し合うんですね。一方、アメリカ人は「褒め合う」のが基本で、より良い部分にフォーカスはあてて評価を下します。減点方式ではなく、加点方式です。


一般的にアメリカ人はドライで、日本人は助け合うと思われていますが、実際にはまったく逆なんですね。


このような状況はとても残念なことでしょう。本来、会社というのはもっと良いイメージを持たれてしかるべき存在だからです。


英語で会社は「company」。この言葉のもともとの意味は「仲間」です。


先日、NHKスペシャルで「ヒューマン なぜ人間になれたのか」という番組が放映されていました。「人間が他の多くの大型哺乳類との競争に負けずに勝ち抜いていった秘密は何か」ということを解き明かして、実に興味深い内容でした。


太古の昔、人間はアフリカで細々と生きていた弱い哺乳類のひとつだったようです。そんな中、インドネシアで大規模な噴火があり、それによって地球の温度が一気に寒冷化に向かい、多くの生き物が死に絶えました。人間の祖先も多くが死んでしまい、絶滅の淵に立たされたそうです。


ここで面白いのは、生き残った人間のうち、さらに生き延びることができたのは、血縁でなくてもお互い助け合い、少ない食べ物を争わずに分かち合ったグループだけなのだそうです。


要は、「協力」こそが人間が生き残った大きな戦略であり、人間を人間たらしめている大きな要素だということです。


会社は決して「人生の墓場」などてはありません。むしろ、人間が人間らしさを発揮できる場所なんです。


会社には、机で寝ている人、仕事に集中している人、適当にサボっている人、趣味のWebページを見ている人、タバコを吸っている人など本当に多様な人間の集合体なんですね。つまり、会社とはポジティブやネガティブ、プラスやマイナスなど、すべての感情や意思、頑張りや怠けといったものが集まった「ひとりの人間」であると言えるでしょう。


だから、単純に「この会社は悪だ」「あの会社には価値がない」といったレッテルを貼るのではなく、もっと幅広い面で見ていくことか、正しい企業観につながるのだと思います。


では、会社の価値は何で決まっているのでしょうか?

「会社の価値」を考える際、経営の教科書的には、キャッシュフローの現在価値をもとに算出する「事業価値」と「金融資産」を足して、「企業価値」というものを求めます。しかし、このようなことを言われてもあまり腑に落ちないと思います。


それよりも、会社の価値というのは、人の生々しい営みの結果であると考える方が納得できるのではないでしょうか。つまり、会社を取り巻くすべての人たちの思惑と行動によって会社の価値は作られている。と考える方が会社に対して正しい付き合い方ができるように思います。


私たちは普段、会社の価値を株価で計ってしまいがちですが、株価は単なる数字ではありません。その中身を覗いてみれば、笑顔と汗と涙、そしてサボりや妬みも全部含まれています。それらが時価総額として表れているんですね。


加えて、会社の資産や収益、将来の期待感、業界の動向、日本の将来、世界情勢、金利状況などといったさまざまなものも影響を与えています。


会社の価値とは、そういったものが全部集まって、ぐちゃぐちゃになったものだとイメージすれば、会社をひとつの“生態系”として捉えることができます。良くなったり悪くなったりと時代によって変化するのも、会社がひとつの生き物だからです。会社のことを「法人」と言いますが、まさに人です。


だから本来あるべき金融教育とは、「株式ポートフォリオゲームをやらせる」のではなく、働くことに価値があり、その価値ある労働の延長に企業の利益があり、その利益の将来期待が会社の価値を形成していると理解することです。